紡ぐ糸vol.1《西・東》2015年1月20日(火)於:近江楽堂

  • エベルト・バスケス:《浮世絵~庄野の驟雨》 箏とギターの為のこの作品は、日本の浮世絵木版画に基づいた現在続行中の室内楽作品シリーズに含まれている。タイトルは、歌川広重の『東海道五十三次』の版画シリーズの有名な作品からつけられており、京都と江戸をつなぐ東海道にある 45番目の宿場である庄野宿での突然、雨に降られた旅人一行を描いた作品である。私の音楽は、土砂降りから雨宿りの場所を探そうとしている人々の不安さのような、落ち着かない状況を描こうと試みている。 この作品は、佐藤紀雄氏と木村麻耶氏に捧げられている。 (エベルト・バスケス)
  • G.F. Handel:《Chaconne(HMV435)》/ Alexandre Lagoya 原曲は ハープシコード組曲のなかのシャコンヌであるが、それをフランスの稀代のギターデュオグループ、プレスティ /ラゴヤがギター二重奏に編曲したものを今回は箏とギターで演奏する。  作品は主題と 21の変奏からなるが、当時のシャコンヌの基本形式に基づき大きな三部分からできている。三つの部 分は長調―短調―長調という教会建築をおもわせる壮大な形式をとっている。 人によっては、それはキリスト教の三位一体になぞられると言う。 (佐藤紀雄)
  • 伊藤美由紀:《絃の独白》 この作品では、ギターの最低音であるE音を基音とした16倍音をもとに、コンピュータで音にひずみをかけて計算し、圧縮、拡張し新構築された倍音構成の5パターンのヴァリエーションからのピッチ素材を、作品に使用している。複雑な音色を創造するために、コンピュータでの計算を1/4音(半音より狭い微分音)までと設定しているために、箏とギターの最初のチューニングに1/4音を取り込んでいる。 分析結果の構成音の全てを縦の響きとして利用することは、今回の編成では不可能であるため、横の時間軸に再構成している。箏とギターの打楽器的なノイズ音と混ぜ合わせて音を濁らせることでピッチを揺らし微分音的な効果を試みている。 絃楽器特有の、ひずんだ音色、透明感のあるハーモニクスなどで絃の独白を表現している。佐藤紀雄さんに、拙作の『プロメテウスの光』からギターソロの作品を、去年から今年にかけて度々再演していただき、その演奏にインスピレーションを得て、今回新たな試みをしている。 (伊藤美由紀)
  • 田中範康:《2つの存在》 ギターと十三絃は、同じ発音原理をもった撥弦楽器の仲間である。それゆえ、実際に作品を書く上で、2つの楽器の音の美学をそこなわないようにするために、どのように音楽を構築したらよいのかかなり悩んだ。そして、それぞれの楽器のあえて古典楽曲を繰り返し聴く事で、今回の 作品の方向性が或る程度定まったのだが・・・。 結局、作品がとりあえず完成するまで、常に迷妄の世界を漂っていたような気がして、かなりしんどい思いをした。本作品は、2つの章からなっており、ゆっくりとしたテンポで展開していくⅠ章は、Ⅱ章の序章とも言える。また、Ⅰ章で提示される様々な音群は、Ⅱ章でも随所に様々に形を変えながら出現することで、両章を密接な関係にしている。 そして、今回の作品では、あえて特殊奏法の使用を最小限におさえ、2つの楽器のかもし出すプリミティブで明瞭な響きを尊重したつもりである。(田中範康)